研究概要 |
私は非線形偏微分方程式,特にNavier-Stokes方程式やEuler方程式などの非圧縮性流体の運動を記述する方程式を関数解析の立場から研究している。具体的にはこれらの方程式の解の挙動を、調和解析学を利用し、調べている。とくに、滑らかな解が有限時間で滑らかさを失うと仮定した場合、流体の渦度がどのような挙動を示すかということに興味を持っている。Euler方程式やNavier-Stokes方程式にたいし、空間遠方で減衰する滑らかな解で、有限時間で滑らかさを失ってしまうような解が存在するか否かは現在においても未解決である。この問題に関して、よく知られたBeale-Kato-Majdaの結果から、解が滑らかさを失う時、渦度のmaximum-normが爆発することがわかっている。我々は、有界領域上のEuler方程式に対し、Beale-Kato-Majdaの結果を改良し、渦度のBMO-normが爆発することを示した。(J.Diff.Equat.9(2003)) また、空間遠方で減衰しない初期条件にたいしての流体方程式の可解性も研究している。空間遠方で減衰する古典解と比べ、遠方で減衰しない解は、数学的に面白いことがおこることが知られている。例えば、空間遠方で増大する初期条件に対し、有限時間で実際に滑らかさを失ってしまう解の存在が知られている。一方、2次元において空間遠方で減衰も増大もしない初期条件に対しては、Navier-Stokes方程式の時間大域的に滑らかな解が存在することが知られている。我々は、このことを熱対流に関するBoussinesq方程式でも言えることを証明した。(Fankciaoj Ekvacioj掲載予定)しかし、3次元においては、この場合も滑らかな解の時間大域可解性はわかっていない。我々は、空間遠方で減衰も増大もしない初期条件に対するn次元Navier-Stokes方程式に関して、解が有限時間で滑らかさを失うための必要十分条件を求めた。(Kyushu Math.J.57(2003))
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