私は非線形偏微分方程式、特にNavier-Stokes方程式やEuler方程式などの非圧縮性流体の運動を記述する方程式を関数解析の立場から研究している。具体的にはこれらの方程式の可解性や解の挙動を、調和解析学を利用し、調べている。Euler方程式やNavier-Stokes方程式にたいし、空間遠方で減衰する滑らかな解で、有限時間で滑らかさを失ってしまうような解が存在するか否かは現在においても未解決な問題である。一方、空間遠方で減衰する古典解と比べ、遠方で減衰しない解は、数学的に面白いことがおこることが知られている。例えば、空間遠方で増大する初期速度場に対し、有限時間で実際に滑らかさを失ってしまう解の存在が知られている.一方、2次元のNavier-Stokes方程式において、空間遠方で減衰も増大もしない初期速度場に対しては、時間大域的に滑らかな解が存在することが知られている。私は澤田氏と共同で、Navier-Stokes方程式と同様に、熱対流に関するBoussinesq方程式に関しても、初期温度に遠方減衰を仮定すれば、遠方で減衰も増大もしない初期速度場に関して大域可解性が言えることを証明した。(Fankciaoj Ekvacioj 47(2004))さらに、私は初期温度に仮定されていた遠方での減衰条件を取り除く事にも成功した。(Fankciaoj Ekvacioj掲載予定)また、2次元の非粘性流体の運動方程式を記述するEuler方程式に関しても、空間遠方での減衰を仮定しない場合でも大域可解性がいえる事を示した。(Commun. Math. Phys. 248(2004))
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