1.方程式の対称性とパラメータ変化における解の挙動:昨年度に引き続き、Klein-Gordon-Zakharov方程式系に対する非線形Schrodinger方程式近似について解の収束を調べた。この方程式系は分散性の異なる2種の波動が相互作用している点が特徴で、プラズマ振動数とイオン音波に対応する両方の伝播速度が無限大の特異極限として非線形Schrodinger方程式が得られるが、極限の非線形項は伝播速度の比率によって異なり、一般には弱い特異性をもつことを見出し、その方程式に対する解の存在と収束を示した。また低エネルギー解に関する収束や静電極限における解の収束についても調べた。 2.非線形波動方程式の対称性と解の大域挙動:昨年度に引き続き、非線形Schrodinger方程式の孤立波解近傍の解を時間大域的に解析した。第1に、線形ポテンシャルが基底状態の他に励起状態を持つ場合に非線形基底状態の漸近安定性を低エネルギーにおいて示した。ここでは励起状態成分の緩やかな時間減衰を時空積分で評価するところが鍵となっている。第2に、主に1次元の巾非線形項の場合について、孤立波解における線形化作用素のスペクトルを具体的に調べ、固有値に関する変分法的表現を導いて上下からの評価式を得た。特にH^1及びL^2臨界巾付近の漸近挙動を詳しく調べた。第3に、空間一様な定常解近傍との解のエネルギー空間での挙動を調べ、高次元の場合に低エネルギー散乱を示した。ここでは定常解との空間遠方での相互作用から生じる特異性を、Strichartz型時空評価と巧妙な変数変換で処理した。
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