研究概要 |
1.ソボレフ写像の拡張の障害の決定に関する研究。 多様体間の写像のなすクラスの中で変分問題を考える場合に自然に登場する関数空間がソボレフ写像の空間である。特に境界条件を付した変分問題を考える場合、トレースクラスのソボレフ写像が多様体に値を取るように拡張できるかどうかという問題は基本的である。 この問題に対して、拡張には位相的な障害と解析的な障害の2種類が存在することを示し、位相的な障害の特徴付けを完成した。解析的な障害に関してはリー群に値を取る問題の場合にはその特徴付けを与えた。 2.H-systemの多重解の存在。 平均曲率が一定Hの曲面を記述する偏微分方程式はH-systemとよばれる。このディリクレ問題は1980年代に変分法と非線形関数解析を用いて盛んに研究され、有名な『定数でない境界値に対しては解が2つ存在する』というレーリッヒ予想の解決を導いた(Brezis-Coron, Struwe). どのような状況の時3つ以上解が存在するかというのはBrezis-Coron, Struweらによって1980年代に問われていた未解決問題であるが、この問題の解決とH-systemの解の多様性の研究を行った。H-systemに関連した無限次元多様体上の変分問題がSO(3)に関連した有限次元多様体上の変分問題と関係付くことに気付き、有限次元と無限次元のモース理論を用いて、境界値に依存するある関数(具体的に書ける)が恒等的に0に等しくなければH-systemは3つ以上の解を持つことを示した。これから特に、"一般的な"境界値に対しては3つ以上の解が存在することが解かり、Brezis-Coron-Struweの問題に一つの解答を与えることができた。
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