与えられた境界条件を満たす、平均曲率が一定の定数である曲面は、ある楕円型偏微分方程式の境界値問題の解として与えられる。更にこの偏微分方程式は変分構造をもち、あるヒルベルト多様体上定義された汎関数の危点として与えられる。この偏微分偏微分方程式が与えられた境界値に対して、曲率が十分小さければ2つ以上の解を持つであろう、という予想はレーリッヒ予想として広く知られており、1980年第に肯定的に解決された。その後、この方程式は一般的な境界値に対しては2つ以上の解を持たないだろうと多くの研究者によって考えられていたようだが、特殊な場合を除きそれを支持するような結果はなかった。 本研究では、大方の予想を裏切り実はその逆が正しいこと、つまり一般的な境界条件に対しては方程式は3つ以上の解を持つことを示した。具体的には、境界値によってきまる非負関数を導入し、それが恒等的に0に等しくなければ解が3つ以上存在することを示した。この上更に、ある一般的な条件が満たされれば、得られた解は(汎関数の危点として)モース指数2以上であることを示した。これはここで得た解が、本質的に新しい種類の解であることを示している。また無限個の解が存在するための判定条件も求めることができた。具体的な幾つかの例から、本研究で与えた条件は、ベストな条件であると思っている。 証明は変分問題が定義されるヒルベルト多様体のある部分集合が、SO(3)のある部分集合と位相的にほぼ同一視できるということをはじめに示し、次にそのSO(3)の部分集合上の境界値によって決まる関数の(モース理論的)振るまいによって、もとの無限次元多様体上の関数の危点の構造が支配されることを示すことでなされる。
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