研究概要 |
本研究で私は,2次元平面におけるAllen-Cahn方程式においてV字型の進行曲面波(traveling : curved fronts)が存在することを示した.V字型の進行波は,Belouzov-Zhabotinsky反応などの実際の化学反応でも観測され,進行波の前後の系のエネルギー差と進行波の曲率の効果により,このような進行波が形成されると考えられている.このような進行曲面波については,"Fisher-KPP type"または"combustion type"の場合においてはその存在が数学的にも知られていた.Allen-Cahn方程式においては未知であったため,本研究では,この方程式に対して優解と劣解を構成することにより,その存在の証明を行った.化学反応におけるモデルは,双安定なものが多く,Allen-Cahn方程式は双安定系でもっともシンプルなものの一つである.私は,用いた優解と劣解との間には進行波はただ一つであるという一意性も証明した.この方法は同時にどのような初期擾乱(initial perturbation)に対して,V字型の進行曲面波が安定であるかを調べることができる.それによると,与えた擾乱が遠方でゼロに減衰するある一定の大きさ以下の擾乱に対しては,進行曲面波は漸近安定であることがわかった.優解はいくらでも大きくとることができるため,更にそのような擾乱がいくら大きくてもやはり漸近安定であることがわかった.現在のところ劣解は一定の関数以下にとることができないため,この関数を下回る擾乱に対してV字型の進行曲面波が復元力があるかどうかは現在のところ不明であり,この問題に対して現在も取り組んでいる.
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