今年度は、おもに4点に確定特異点をもつFuchs型の微分方程式であるHeunの方程式について研究結果を得た。 BC_1型Inozemtsev模型という量子力学の1粒子の模型の固有値・固有関数を求めることは、Heunの方程式の解を調べることと同値であることが知られている。このBC_1型Iozemtsev模型において、報告者はBethe仮設法を開発し、また、有限帯ポテンシャルの理論との関係をもとにモノドロミーの超楕円積分による表示式を得て、固有値の分岐に対しての応用も導き出した。また、この模型の特別な場合に対応するLameの方程式に対し、ある境界条件をみたす固有関数に対応する固有値について、モノドロミーの表示式を用いることにより、楕円函数の周期を変数とみなしてこれについて解析接続をし、異なる固有値が解析接続によりつながっていることを数値計算により見出した。また、この解析接続のようすと、固有値の求める別の方法である摂動論とが、固有値として現れる級数の収束半径において整合的であることも確かめた。 ところで、多粒子(N粒子)の量子可積分な模型であるBC_N型Iozemtsev模型において、準可解性、つまり、模型のヒルベルト空間の中においてある有限次元の空間が模型のハミルトニアンにより保たれていることが既に知られており、この模型において可積分性と準可解性が整合的になっているということを過去に示しているのだが、特にN=2の場合において、より詳細な計算をし、準可解性に関係する空間における作用素をより具体的に表示し、それらの作用素たちの準可解性に関係する空間における関係式などを導出した。
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