星は密度の高い星間雲の分裂・収縮により誕生する。本研究の目的は、磁化した星間雲の分裂・収縮過程を、磁気拡散を正しく考慮して数値シミュレーションすることである。 初年度の研究では、初期に力学平衡状態にある星間雲の分裂過程を2次元の磁気流体力学シミュレーションにより追跡し、磁気拡散が磁気雲の分裂を促進することが明らかになった。2年度の研究では、この研究をさらに発展させ、形成されたコアの質量が質量降着によって増大し、星サイズのコアが形成され、それが星間雲の進化に及ぼす影響を調べることであった。特に、星間雲スケールでは、磁場だけでなく乱流場も重要であるので、乱流場の効果について注目した。 まず、星間雲で観測されるような乱流場を速度場として与え、磁化した星間雲の力学進化を数値シミュレーションによって追跡した。その結果、乱流圧縮により形成された高密度領域で、磁気拡散が加速され、高密度コアが形成されやすいことが明らかになった。従来の星形成の理論モデルでは、星形成のタイムスケールが観測で予想されるものよりも長すぎるという大きな問題があったが、乱流圧縮による加速を考慮すると、観測と矛盾しないタイムスケールが得られることが分かった。また、形成されたコアの物理状態は、おうし座分子雲などで観測されるコアの性質とよく似ていることも分かった。これらの結果をもとに、星形成率(星間雲の全質量のうち星になる質量比)が磁場の強度によって決められていることを提案した(論文リスト参照)。星間雲全体が磁場で支えられている場合には、星形成率は数パーセント程度になり、おうし座分子雲はこのケースで説明される。一方、星団が形成されるような領域では、磁場はそれよりも少し弱く、星形成率は20パーセント程度に達することが予想された。また、磁場がない場合には、高密度ガスの空間分布が非常に局所化し、観測と矛盾することがわかった。この結果は、査読付論文としてThe Astrophysical Journalに投稿中である。
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