輻射流体力学の新しい定式化とその粒子法的計算法による天体形成過程の理論的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15740118
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 犬塚 修一郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80270453)
• キーワード: 輻射流体力学 / 輻射輸送 / 星・惑星形成 / 分子雲形成 / 熱的不安定性

研究概要

本研究では、まず輻射流体力学を相対論的に厳密な形で定式化することが前提である。具体的には、時間微分項を含む輻射輸送方程式の形式解を遅延グリーン関数の手法で構成し、任意の場所の輻射エネルギー密度や輻射流速密度を計算する方法を採る。今年度は、その基礎方程式を用いて、種々の線形波動問題等の基礎的な物理素過程を考察し直した。現在は、過去の類似の研究の間違いや不適切さを正して、線形理論を整備しなおしている。また、全く新しい手法に基づく独自の非線形数値シミュレーション・コードを開発しており、これを用いて具体的な天体物理現象に取り組む予定である。その際、厳密な線形波動の振る舞いを把握しておくことは、物理現象への直感を養うだけでなく、シミュレーション・コードの較正のためにも重要である。
また、このような基礎的な定式化と並行して、光学的に薄い場合の輻射冷却関数を用いた熱不安定性のダイナミックスの研究も進めている。具体的には、輻射冷却に伴う熱的不安定性の非線形進化の数値シミュレーションの際には、物理的に適切な熱伝導を含めて(その熱伝導係数と冷却関数で決定される)熱的不安定性の臨界波長の空間サイズを解像する適正なグリッド長をもって計算しなければならないという「フィールド条件」を提唱し、その必要性・有効性を明示的に示した。この内容は米国・天体物理学会誌(Astrophysical Journal)にレターとして発表した。
また、本科学研究費を用いて高速計算用の並列化PCを購入して、次年度以降に行う非線形計算に使う準備を整えた。

研究成果

• [文献書誌] 小山洋, 犬塚修一郎: "The Field Condition : A New Constraint of Spatial Resolution in Simulations of Thermally Unstable Hydrodynamics"The Astrophysical Journal Letters. 602. L25-L28 (2004)
• [文献書誌] 佐野孝好, 犬塚修一郎, N.Turner, J.Stone: "Angular Momentum Transport by MHD Turbulence in Accretion Disks : Gas Pressure Dependence of the Saturation Level of the Magnetorotational Instability"The Astrophysical Journal. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 瀬田, 長谷川, 阪本, 岡, 澤田, 犬塚, 小山, 林: "Detectoin of Shocked Molecular Gas by Full-Extent Mapping of the Supernova Remnant W44"The Astronomical Journal. 127. 1098-1116 (2004)
• [文献書誌] 犬塚修一郎: "Star Formation : Theory and Modelling"Proceedings of 4^<th> Cologne-Bonn-Zermatt-Symposium : "The Dense Interstellar Medium in Galaxies". (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 犬塚修一郎, 小山洋: "The Formation of Molecular Clouds : An Origin of Supersonic Turbulence"ASP Conference Proceedings. 289. 195-198 (2003)
• [文献書誌] 野村英子, 犬塚修一郎: "Photoevaporation of Protoplanetary Disks Irradiated by a Massive Star"ASP Conference Series. (印刷中). (2004)