中質量ブラックホール(BH)は、巨大BHへと成長途上にあるBHと考えられており、そのため巨大BH形成過程解明の鍵を握る天体である。しかし、我々が発見したM82銀河中のX線天体M82 X-1以外には、中質量BHの有力な候補はまだ発見されていない。そこで我々は、第二の中質量BHを発見すべく、M82とよく似た性質を持つスターバースト銀河NGC2146を米国のX線天文衛星チャンドラを用いて観測した。既に2002年9月から12月にかけて、ほぼ1月に2回約3時間の観測を行っていたので、今年度はそのデータ解析を行った。その結果、BH候補天体はいくつか発見したがそれらは主に中質量BHよりも軽い恒星質量BHであり、M82 X-1のような明らかな中質量BH候補は見つからなかった。また銀河中心に電波源と一致するX線源を発見し、これは巨大BHの可能性が極めて強い。これらの点源の他にNGC2146全体を取り囲むdiffuseなX線放射も発見した。そのスペクトルはソフト成分とハード成分に分けることができ、ソフト成分は温度約1千万度程度の高温ガスからの輻射であることがわかった。これはスターバースト活動に由来するものと思われる。一方ハード成分の起源は、温度一億度以上の高温ガスの可能性もあれば、空間分解しきれなかった点源の集まりの可能性もある。分解できたX線点源の明るさ分布との比較では、後者を支持するように見えるがまだ明らかではない。 また、極光度X線天体の正体解明には硬X線観測が鍵になる。日本はその硬X線観測を可能にするX線天文衛星Astro-E2の打ち上げを2005年に予定している。私は今年度、Astro-E2搭載用X線CCDの開発研究に従事し、主にその機能試験およびソフトウェア開発を行った。
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