本研究では3つの柱を中心として研究を遂行している。それらは1)種族III星の初期質量関数、2)種族III星形成における磁場の役割、3)矮小銀河の形成と宇宙再電離の関係、である。このうち特に今年度は2、3について詳細な研究を行い、いくつかの結果を得た。まず2)に関しては修士の学生との共同研究で、基本的に原始ガス雲が種族III星に収縮していく途中で、磁場が取り残されることはなく、原始星回りの回転円盤までずっとガスに凍結していることがわかった。この結果初期磁場がある程度の値であれば、回転円盤で磁気乱流不安定性が誘起され、乱流粘性による角運動量輸送が重要になることを明らかにした(Maki & Susa 2004)。このときに必要な初期磁場の値はこれまで議論されてきたB=10-19G程度では足りないが、昨年提案されたQSO周りの輻射力によるものでは十分に足りることがわかった。種族III星の形成過程においても、磁場が重要な役割を果たす場合があることを明らかにした。3)については矮小銀河の形成を数値シミュレーションによる輻射流体力学を用いて計算を行い、論文をまとめた。特に昨年話題となった宇宙の早期再電離の効果を取り入れた計算を行い、その結果、輻射輸送の効果が非常に重要となることを明らかにした(Susa & Umemura 2004)。またその後この問題をより宇宙論的な視点から考察しなおし、計算もパラメータ空間をシステマティックに調べた。その結果いわゆるCDMのサブストラクチャー問題が早期の再電離のみによって基本的に解決されうることを示した(Susa & Umemura in preparation)。
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