研究概要 |
本研究は、人工衛星が検出するガンマ線バーストを、その直後から地上の自動応答望遠鏡で追観測してその発生機構や物理状態を明らかにすることを目的としている。HETE-2衛星は順調に位置通報を出しており(例えば、Crew, G.B, et al.,2003,Astrophysical Journal,599,387)、バーストの位置座標をインターネットで即時に地上の天文台に配信している。バースト直後からの残光観測はこれまでに数例しか得られていなかったが、研究代表者らの昨年度の観測(GRB021004)から、残光の一部は単調に減光するのではなく、バースト後0、1-1.0日の間に減光から転じて憎光し、再度異なるべき指数で減光するなど、複雑な振る舞いを示すことが分かってきた(Fox, et al.2002,Nature,422,284)。本研究では、これらの実績をふまえて、早期残光の測光観測からガンマ線バーストで生じる相対論的衝撃波の力学を解明することを目指してきた。今年度の成果は、GRB030329について、世界で最速の自動応答観測に成功し、これまでで最も明るい残光を独立発見したことである(Torii, et al.,2003,Astrophysical Journal Letters,697,101)。このバーストは、後に、残光の可視光スペクトルに超新星成分が存在することが分かった。これまで、30年以上にわたりガンマ線バーストの発生機構は推測の域を出なかったが、GRB030329の観測結果は、ガンマ線バーストが大質量星の重力崩壊に関連することを初めて直接的に示すもので、天体物理学の分野で極めて重要な成果と認められている。本研究の成果として特に強調すべき点は、残光を独立発見して分光観測のための精密位置情報を即座に提供したこと、バーストから1日以内の最早期において単一のべき関数で表される単調減光を発見したことが挙げられる。
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