研究概要 |
今年度は主に以下の研究を行い、国際会議、学会等で中間的な報告を行った。 1.7αクラスター模型における^<28>Siの構造計算 ^<28>Siの比較的低励起エネルギー領域(7MeV-1OMeV)には、3^-,0^-,5^-という負のパリティを持った状態がバンド構造を持って存在している。これらの集団的状態は、当然ながらsd殻模型では表現できない。我々は、^<28>Siを7αクラスターの状態として考え、最近接対が多くなるような幾何学的配位を混合し、GCM計算を行った。その結果、まだ詳細な詰めはまだ残っているものの、^<28>Siの集団的構造がαクラスターの高分子状態として理解しうることを指摘した。同時に、D_<6h>の対称性のある2次元クラスター状態である「Rokka」状態を予言した。この状態から3次元状態への遷移は、その特異性から非常に小さいと考えられ、安定化することが予想される。今後、この状態が、どの程度安定に存在しうるかを議論する予定である。また、このモデルは、^<28>Siの状態を基底状態から高スピン状態まで統一的に扱えるメリットを持っている。相互作用等の詰めを行った上で、統一的な計算を行っていく予定である。 2.α+Λ系(^5_ΛHe)のパイオン放出弱崩壊によるαの壊れ度合いの検出可能性 α+Λの系である^5_ΛHeハイパー核で、どの程度α粒子がαを保ったまま存在するかを議論した。最近の5体計算により、5体系のハイパー核の中でαは固くはなく、α粒子単独に比して、3MeV 程度その束縛エネルギーを失っているという結果が出ている。このα粒子の壊れの程度を最近測定された^5_ΛHeハイパー核のパイオン放出弱崩壊幅で見てみようという試みである。結果は、現在の測定誤差の範囲内ではα粒子の壊れを直接観測することはできない。しかし、4体系のΛハイパー核では、その崩壊様式を組み合わせることにより、ハイパー核の中の「芯核」の壊れの程度が観測可能な可能性もあり、これについて、今後研究を続ける予定である。
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