研究概要 |
この研究の第一の目的は、幾何学的な解釈が明らかではない共形場理論(Conformal Field Theory, CFT)について、点(D0-brane)を同定する基準を明確にすることである。そのためには、まず、一般のCFTにおいて、どのようなD-braneが存在するのかを分類する必要がある。本年度の研究では、非幾何学的なCFTの例としてKazama-Suzuki模型を取りあげ、そのD-braneの分類を行うことを目標とした。 Kazama-Suzuki模型はLie群Gとその部分群Hによって定まるcoset CFTの一種であり、N=2の超対称性を持つことが知られている。本年度は、Kazama-Suzuki模型G/HのD-braneについて以下のことを明らかにした: ・Gの自己同型でHを不変にするものを分類し、対応するD-braneを構成した。 ・構成したD-braneが、N=2の超対称性を保つことを示した。 一般に、coset CFT G/Hにおいて、Gの自己同型ωでHを不変に保つものがあれば、場の境界条件をωでひねることにより、非自明なD-braneを作ることができる。第一の結果は、Kazama-Suzuki模型に対して、そのような非自明な境界条件の分類を初めて与えた、というものである。Kazama-Suzuki模型においてN=2の超対称性(時空のN=1の超対称性)が、D-braneによって保たれるかどうかは明らかではなかった。第2の結果は、Gの自己同型から従う非自明な境界条件に対して、N=2の超対称性は常に保たれることを示した、ということである。
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