本研究の目的は、これまで有効理論を用いて不完全に扱われてきたハドロン行列要素を第一原理から直接計算する方法を開発することである。この目的のために、アイソスピン2のπ中間子散乱の定量的な研究からはじめた。π中間子散乱の研究は、ハドロン行列要素の研究を別にしても、量子色力学におけるハドロン間相互作用を理解するうえで、欠くことのできない重要な研究である。 平成16年度は、2体波動関数から直接散乱位相を計算する全く新しい方法の開発を試みた。我々の新しい方法は往来の方法に比べ数値計算上格段に非常にすぐれた方法である事が分かった。実験値と比較できうるほど高い統計精度を、比較的容易に達成できるのである。この成果により、有効理論を用いず第一原理のみから、ハドロン行列要素の定量的な評価が可能であることが示された。 計算結果の解析とグラフ化は全て科研費で購入したパーソナル・コンピュータ、コンピュータソフトウエアーを用いた。今年度の研究成果は国際会議Lattice'04で発表した。現在これらの研究成果を投稿雑誌に投稿中である。平成17年度は、今年度の研究を元にアイソスピンが0及び1である2体パイ中間子散乱の研究へ発展させ、σおよびρ中間子の様な不安定粒子の性質を調査する予定である。 2003年6月21日、国際会議Lattice'04 (Fermi National Accelerator Laboratory、アメリカ)(石塚)
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