1)核子と全く同じ量子数を持つ動径励起状態(ローパー共鳴)N(1440)ような場合は、ハドロンの虚時間2点相関関数の虚時間遠方での漸近的振る舞いからハドロンの質量を求めるという従来からの方法では難しい。そこで最近、発展著しい最大エントロピー法を用いて、格子QCD数値計算によってもたらされたハドロンの虚時間2点相関関数から直接ハドロンのスペクトル関数を導出することを試みた。スペクトル関数は、ハドロンの基底状態のみならず動径励起状態の性質について多くの情報を得ることができる。得られたスペクトル関数の解析により、ローパー共鳴はクォーク3体の状態が支配的であることが判明した。また有限体積効果についても調べ、ローパー共鳴が基底状態(核子)よりも有限体積効果に非常に敏感であり、かなり広がりを持った状態であることを指摘した。 2)一昨年秋に日本の実験グループ(LEPS collaboration)によって発見された正のストレンジネス(S=+1)を持つエキゾチックなバリオン、"ペンタクォーク"状態Θ(1540)に関する格子QCDを用いた研究を世界に先駆けて行った。未だ、実験的に確定していないペンタクォークの量子数(スピン、パリティ、アイソスピン)に関して、格子QCD数値実験を用いてその量子数を予言した。また、負のチャーム(C=-1)を持つエキゾチックなバリオンΘcの存在に関しても数値実験して、その質量が多くの現象論模型で予測されている程軽くはなく、むしろ核子・D中間子の崩壊閾値よりもはるかに重いことから、Θ(1540)のように寿命の長い共鳴状態ではなく、かなり寿命の短い共鳴状態の可能性が高いことを報告した。
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