研究概要 |
超対称な、あるいは超対称性が破れたnon-compactな曲がった背景上の超弦理論は、ホログラフィック双対性等の多くの重要性を持ちながら、未だ世界面上のアプローチでは多くの未解決問題を有しており、本研究課題の中心テーマに据えられている。本年度、私は次の3つのテーマについて研究を行った。(1)N=1,N=2超対称ゲージ理論のArgyres-Douglasポイントの非摂動論的解析。(2)時間に依存して崩壊または生成されるD-brane(S-brane")に関する熱力学的考察。(3)N=2超対称Liouville理論におけるD-braneの厳密な構成。 第1のテーマについては、近年発展した、一般化されたKonishi Anomaly方程式を用いた超対称ゲージ理論の非摂動論的解析の手法を用いて、Argyres-DouglasポイントのN=1への拡張を論じた。この手法は、Seiberg-Witten理論の自然な拡張と位置づけられ、4次元超対称ゲージ理論の相構造を探る強力な枠組みを与える。N=1、N=2のArgyres-Douglasポイントの近傍の相構造、スケーリング則などを解析し、また超弦理論での解釈に関して議論を行った。 第2のテーマについては、S-brane背景の有限温度系の自由エネルギーの解析を行った。この系は、初期状態がどんなに低温であっても、十分に時間が経遅した後には、高温での弦理論に特有なHagedorn的ふるまいを示し、紫外領域の不安定性が生ずると予想されており、私の自由エネルギーの解析はその予想を裏付ける結果を与えた。 第3のテーマでは、N=2超対称Liouville理論のD-braneについて、境界付き共形場理論の手法での解析を行った。Modular bootstrapと呼ばれる手法を用いて、N=2 Liouville理論のD-braneを記述する厳密な境界状態を初めて決定することに成功した。この成果により、現在もなおchallengingなテーマであるnon-compactな曲がった背景上のD-braneの厳密な記述に関して、大きな進展が期待されることとなった。このテーマについては、本研究課題の期間中、引き続き詳細な研究を遂行したいと考えている。
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