今年度はまがった時空上での弦の振る舞いについて考察した。大きく分けると二つの仕事に分けられる。まず一つ目はpp-wave背景上のII型弦理論についてである。II型の超弦理論は低エネルギーにおいては10次元のN=2超重力理論によって記述されると考えられている。この超重力理論の古典解のうち、pp-wave解と呼ばれるものは、32個の大域的超対称性を保ち、AdS空間からペンローズ極限によって得ることができるという性質を持つため、AdS/CFT対応を通して4次元ゲージ理論と関係していると考えられている。しかもpp-wave解上では弦理論のスペクトルを厳密に求めることができ、'それらはCFTのゲージ不変演算子と対応していることが最近明らかになった。この時空は高い対称性を持っているためその対称性の離散的部分群を用いてコンパクト化することができるが、私はこの時空の8つの空間的方向と一つの光的方向のあわせて9次元分をコンパクト化された状況を考え、そのような空間上での弦のスペクトルについて調べた。もう一つの仕事はO型弦理論におけるNS5-ブレーンについてである。超対称性をもたないO型と呼ばれる弦理論には閉弦セクターにタキオンが存在し、時空そのものが何らかの不安定性を持っていると考えられており、そのダイナミクスの解明は弦理論の非摂動論的な振る舞いを理解するうえで重要であると考えられている。私はS1コンパクト化されたO型弦理論にNS5-ブレーンを導入することで、タキオンが時空の大部分から除去され、NS5-ブレーンの上にのみタキオンが存在するような状況について考察した。その結果、このタキオンの凝縮がWittenの泡と呼ばれる領域を生成することで時空を崩壊させることをT双対性を用いて重力で扱える系に移ることによって示した。
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