軽い原子核におけるクラスター構造に焦点をあて、最近、理論・実験ともに急速に進展しつつある中性子過剰核において、クラスター構造がさらに重要性を増し、原子核の存在形態のひとつとして普遍的に存在するということを、理論の側から明らかにした。 たとえば、3つのαクラスターが正三角形配位に並んだ構造の分析も行った。系がこのような三回対称性を持つ場合、K=3の回転帯構造を持つことが可能であるが、過剰中性子の存在しない安定核の^<12>Cではいまだに実験的に確認されず、3αの正三角形構造は確立されていない。そこで、3つのαクラスターのまわりに2つの過剰な中性子を運動させた^<14>C核を考え、この中性子と3αとの間に働く引力により、正三角形対称性(D3h)を持った正parityと負parityの回転帯がα放出の敷居値より少し低いエネルギーを出発点に現れる事を示した。対応した状態の候補も実験的に存在することがわかった。このことは、一見これまで長く議論されてきたクラスター構造の出現メカニズムである敷居値則と反転二重項の考え方が中性子過剰核においても成り立つように思える。しかしむしろ、このクラスター構造の出現は、本来ガス的にゆるく相互作用していた3つのαクラスターが、その周りを霧のように運動する中性子がもたらす引力によって結晶構造的に安定化する、中性子過剰核に特有なメカニズムに起因すると考えられる。これについてはPhysical Review Letters誌に論文が印刷中である。 さらに、反対称化分子動力学(AMD)を拡張し、軽い原子核の構造を系統的に計算するための全く新しい方法論を確立した。この方法については、Physical Review誌に発表された。
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