研究概要 |
昨年度までにグリズム素子の開発を行い、可視光領域での分光観測ができるようになった。Z=10のような初期宇宙からのGRBの赤方偏移を決定するには近赤外線での観測が必要となる。そこで、今年度は赤外線検出器の冷却系の実現、読み出し技術の確立、およびフィルターの設計に専念した研究を行った。基盤A研究(代表:中村卓史)で購入した機械式冷凍機を赤外線検出器にマウントすることで77Kの目標温度を達成した。検出器の特性(量子効率)は温度依存性があるために高い精度での温度コントロールが必要である。そこで検出器周辺に温度センサーを取り付け、PID制御を行うことで±0.3Kの精度で温度コントロールができることを実証した。赤外線検出器からの信号をマルチプレクサを用いて順に読み出し、AD変換をかけることでデジタルデータとして取り込むためのハードウェア開発を行った。GRBの赤方偏移を決定する場合、既存のJ, H, Kバンドフィルターだけでは高精度の観測ができない。そこで、これら3種類のフィルターのバンドをさらに分割するためのフィルターをデザインし製作した。フィルター製作費用はかなり高価なものになるために、本研究の枠組みでは設計のみを行い、製作費用は基盤A研究で賄うことにした。 今年度の研究で製作した赤外線検出器を用いた試験観測で、J, H, Kバンドにおいての限界等級がそれぞれ15等級程度であることを示した。現在が最適の設定であるかの最終判断はまだであるが、今後の観測で最大限の性能が出せるように調整する予定である。 2004年12月8日のGRBでは可視光領域で撮像を行い、残光現象を検出した。本システムにおける最初の検出である。残念ながら発生直後でも暗いイベントであったために赤方偏移決定には至らなかったが、世界でもかなり速い段階からの連続観測に成功し、20等級程度までの減光の様子をモニターすることができた。 過去のガンマ線衛星によるGRB観測データを用いて、ピークエネルギーと光度の間に強い相関を発見した。この関係を基に、初期宇宙における星生成率を導出し国際会議で講演した。
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