本研究の目的は「一般化された重力理論における宇宙論」であり、今年度は特に「重力理論と宇宙背景輻射」および「重力理論の理論的な諸問題」について研究を行った。 スカラーテンソル重力理論に対する宇宙背景輻射のゆらぎの観測データ(WMAP)からの制限について解析を行った。これにより、宇宙背景輻射を用いた世界で初めての重力定数の時間変化の制限(5%以下)を与えることができた。 一般化された重力理論の理論的な諸問題と観測的制限について考察を行った。その結果、ラグランジャンがリッチスカラーばかりでなく、より一般のリッチテンソルやリーマンテンソルの関数であるような重力理論では、負エネルギーをもつゴーストと呼ばれる場が一般的に現れてくることがわかった。そのような場を持つ理論では、系はよりエネルギーの低い状態へ行こうとするため不安定であり、矛盾のない重力理論とはなりえないことを示した。また、静的な弱い重力場の近似で、ニュートン重力が再現されないこともわかった。この解析結果は、雑誌に掲載予定である。
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