本年度は、Belle実験で収集されたデータの解析を大阪市立大学で遂行するための解析プラットフォーム構築の最終段階として、ディスクアレイ装置の増強を行い、データストレージの容量をほぼ2倍とした。この大容量データストレージに高エネルギー加速器研究機構よりデータを転送した。 国内で行われた研究会に出席し、理論計算の現状、他の実験グループにおける結果の予備的な結果等の情報を収集し、議論を行った。他の実験グループあるいはBelle実験グループ内での他のチャンネルによるVubの測定結果の精度向上により、レプトン包含反応による解析の利点が生かせなくなりつつある現状が明らかになった。具体的には、統計精度が向上したために系統誤差の向上を図る必要が出てきたが、本研究で当初予定していた方法では困難である程度まで統計精度の向上が著しい。また、系統誤差の内、支配的であるものは、理論計算における誤差、また、Vubの測定は、小林・益川行列の別の行列要素であるVcbの測定に一部依存するため、このVcbの測定誤差である。従って、Vubの測定精度の向上を図るために、Vcbの測定精度の向上が期待できる解析への方針変更を検討中である。 3月にアメリカ合衆国カリフォルニア大学サン・ディエゴ校において開催されたユニタリティ三角形についてのワークショップに参加し、他の実験グループの最新の予備的な実験結果や、理論計算の進展状況等について情報を集めると共に、Vubの測定における課題等について議論した結果、Vcbの詳細な測定を早急に行うことが、本研究の目的であるVubの測定精度の向上に寄与する可能性が大きいことを確認した。
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