ニュートリノ振動現象におけるappearanceの発見を目指して、東海村に建設中の大強度陽子加速器およびスーパーカミオカンデを用いた基線長295kmの長基線ニュートリノ振動実験(T2K実験)が計画されている。このような長基線実験では、ニュートリノ・ビームの中心方向を精密に測定することが不可欠である。本研究では、新しいアイデアに基づいた低コスト、高性能のビーム・プロファイル・モニターを開発している。 生成標的から約300メートルの位置でニュートリノ・ビームのプロファイルを測定することによって、その方向、安定性をモニターすることを想定する。この位置では、ニュートリノ・ビームは、10メートル程度に広がっており、そのすべてを覆おうとすると、巨大な検出器が必要になる。しかし、大強度ビームであるという特性を生かして、鉄とプラスチック・シンチレータからなる比較的コンパクトな検出器をビームに垂直な面内で格子状に10個程度、配置することによってビームプロファイルを測定するのである。 まずシミュレーションにより必要な物質量、配置を決めた。ビームの方向を精度よく測定するためには、生成されたニュートリノのエネルギーに応じて測定する必要があるためニュートリノ相互作用を含むシミュレーションで反応イベントの取捨選択も含めてスタディした。その結果、高さと幅が1メートル、奥行きが2メートルの鉄からなるモジュールを上下左右に5個ずつ配置することにより、1日単位でビーム方向を測定するのに十分なニュートリノを検出することができることが明らかになった。鉄は20cm厚さの板からなり、板と板の間に荷電粒子検出装置を設置することによってニュートリノを検出する。モジュールの周りはシンチレータで多い、宇宙線によるバックグラウンドを区別するためのベト検出器とする。 荷電粒子検出器およびベト検出器の一候補として、プラスチック・シンチレータを用いることを考えている。読み出し法も含めてスタディーし、必要とされる仕様(厚さ等)をまとめた。
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