ビーム衝突型実験の荷電粒子飛跡検出器を用いたトリガーとしては試みられたことのない、磁場中での荷電粒子の飛跡(円弧)を直線に変換するConformal変換と、一般的な直線認識アルゴリズムであるHough変換とを組み合わせた新しいトリガーアルゴリズムを、コンピューターシミュレーションにより、その基本性能を評価した。基本性能として重要な項目は、荷電粒子数の同定、飛行方向の測定、横方向運動量の測定、高いバックグラウンド環境での安定した動作等がある。新しいアルゴリズム中に含まれるパラメーターの最適化には未だ余地があるが、荷電粒子数の同定では、既存のトリガーアルゴリズム以上の精度を得ることができた。飛行方向の測定では既存アルゴリズムと同程度の精度が確認できた。更に、最も重要な目標であった荷電粒子の横方向運動量の測定にも十分な精度で成功した。これは、既存のトリガーアルゴリズムでは測定不可能、あるいは非常に精度の悪い測定しか行うことができなかったものであり、本研究の新しいアルゴリズムの実用性を示している。 今後は、パラメーターの最適化を行いつつ、高バックグラウンド下での動作特性を更にシミュレーションにより、明らかにし、その基本性能の把握と向上を目指す。同時にハードウエア上での実現を目指す。
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