ビーム衝突型実験用の荷電粒子飛跡検出器を用いたトリガーとしては初の、磁場中での荷電粒子の飛跡(円弧)を直線に変換するConformal変換と、一般的な直線認識アルゴリズムであるHough変換とを組み合わせた新しいトリガーアルゴリズムは平成15年度、16年度に行ったシミュレーションによる基本性能の確認とパラメーターの最適化により、実用に耐えうることが示された。そのため、今年度の研究は、この新しいアルゴリズムを実装するための電子回路の作成が主な目的であった。今回作成したものは、9U VME規格のボードで、入出力チャンネル数が448のものである。入出力は14個のコネクターを介して行われる。各コネクターからは32チャンネルの信号を入力、または出力として使用できるようになっている。使用できる信号レベルは差動ECL信号、またはLVDS信号である。全チャンネルは一つのField Programmable Gate Array(FPGA)に接続されており、このEPGAに任意のアルゴリズムをダウンロードすることによりトリガー回路として働くようになっている。FPGAにはXilinx社のXC3S4000FG900を使用し、比較的大規模なトリガーのロジックでも十分対応できるようになっており、汎用性の高いものとなっている。作成には電子回路設計等の期間を含めおよそ10ヶ月を要した。その後、ボードの基本性能のテスト等を行い、設計通りの動作ができていることを確認した。また、Hough変換によるトリガーアルゴリズム等を実際にダウンロードし、擬似的な入力を与えることにより、ハードウエアレベルでのHough変換によるトリガーアルゴリズムが実際に使用できることを確認した。
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