研究概要 |
太陽系に存在する鉄より重い重元素の約99%は、遅い中性子捕獲反応過程(s過程)と、速い中性子捕獲反応過程(r過程)で生成されたと、考えられている。しかし、その一方で、陽子過剰領域側には、p核と呼ばれる安定な同位体が存在している。これらのp核は、希少な同位体比(0.1〜1%程度)を持ち、中性子捕獲反応で生成できないという特色を持つ。そのため、これらのp核の天体起源は、過去50年間に亘って議論されてきていた。p核の大部分は超新星爆発の光核反応で生成されたと考えられているが、その他に超新星爆発におけるニュートリノ反応、中性子星のX線バトーストによる陽子捕獲反応等による生成も提案されている。太陽組成の分析と超新星爆発のモデル計算により、35個のp核のうち27個は、超新星爆発の光核反応によって主に生成された証拠を見出すことができた。20個のp核におて、2個中性子数の多い安定同位体は、s過程で生成されたs核である。このp核とs核の同位体比に一定の関係があるこを発見した。これは、p核がs核から(γ,n)光核反応で生成されたことを示す。その'方で、モリブデン、サマリウム等は20個のp核には含まれず、他の核反応による寄与が高い可能性があることが判明した。陽子捕獲反応断面積の測定を行うために、筑波大学加速器センターのタンデム加速器を用いて陽子照射実験を行った。試料として、ナチュラルのサマリウムを用いた。5MeVと10MeVのエネルギーを持つ陽子を、サマリウムのターゲットに照射した。陽子捕獲反応によって生成された不安定核のべ一タ崩壊にともなって放出されるガンマ線をGe半導体検出器で測定した。また、同じ測定手法を用いて、Re-186のアイソマーへの中性子捕獲反応断面積を計測を行い、超新星爆発の年代を計測するRe-187/Os-187原子核宇宙時計の改良を行った。
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