研究概要 |
(1)宇宙の大規模構造の観測データを制約 平成16年10月に公開された最新最大のSloan Digital Sky Survey DR3を用いて、分光された銀河のデータ374,767個を定量的に扱う為に、距離決定の精度が高く、銀河以外の他の天体と誤認される可能性が低いデータを選び、観測波長が制限されていることによるK補正を行った。さらに、カウント・イン・セル法を用いる為に観測領域に大きな穴が無いRA150〜210度,DEC45〜67度の領域を選び、データの質を均一化した。 (2)SDSSによる最新の観測データを用いて、非加法的と加法的熱・統計力学との違いを明確化 重力が形成する宇宙の大規模構造の普遍的な性質を調べるために、(A)系が加法的か?(B)分布関数が長くテイルを引くか?の2点に着目した。(A)○(B)× の代表例としてボルツマン統計力学にビリアル・パラメーターを導入したモデル、(A)×(B)× ボルツマン統計力学に空間的にフラクタルな物質を導入、(A)○(B)○ Renyi統計力学、(A)×(B)○ Tsallis統計力学の4種類を調べた。カウント・イン・セル法を用いて銀河の存在確率を上述(1)の観測データと各統計理論を比較したところ、Tsallis統計力学が最も良く観測を再現することが明らかになった。以前はデータ数の不足の為に決着がつかなかったのだが、今回は、非加法性と分布関数の長いテイルが必須だと判明した。なお、理論モデルの比較には、パラメータ数にハンディを課す赤池指数(AIC)を用いている。 (3)自己重力系の崩壊過程での速度分布が非ガウス性を示す 重力多体系専用計算機GRAPE5を共同利用し、自己重力系での崩壊過程と、2つの塊の衝突によって現れる速度分布をN体シミュレーションにより調べると、潰れる方向ではガウス分布になり、それ以外の方向では様々な速度分散を同じ重みで重ね合わせた分布がよく合うという結果を得た。
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