この研究は、理化学研究所の加速器研究施設にある入射核破砕片分離装置で生成されHeガス充填RFイオンガイド(RFIG)で収集・冷却された短寿命核の質量を、多重反射飛行時間質量分析器(MR-TOF)を用いて高精度に測定することを目的とする。それに向けた準備を行ってきた。 高精度質量測定のためには、RFIGからのイオンをバンチ化し同時に1eV以下にまで冷却する必要がある。そのための装置として、RFトラップを製作した。イオンは高効率にトラップへ導かれ、冷却した後MR-TOFへ引き出さなければならない。さらに、その場合にこれまで達成された質量分解能を再現できるようにする必要がある。RFIGからのイオンをより高効率にRFトラップへ導くためには、トラップ領域を大きくする必要がある。しかし、その場合MR-TOFの分解能が低下することが予想される。 そこで、2段階リニア型のRFトラップを考案した。前段は、入射軸方向の長さが3cm程度のトラップで、コンピュータ・シミュレーションでは予想される縦方向エミッタンス10eV/μsのRFIGからのパルスビームは80%以上の高効率で捕獲可能である。後段は、同長さが5mmのトラップで、テスト実験ではこれまでの質量分解能4万を上回る結果が出ている。また、冷却の効果により質量スペクトルの裾部分が著しく減少していることを観測できた。これは、希少な短寿命核の質量測定に向けて、非常に有効な進歩である。前段から後段へのイオンの移送は、間にあるグリッドにパルス電圧を与えることで行っている。 今後は、MR-TOFをRFIGに結合しオフライン試験を行い、その後オンライン実験で短寿命核の質量を測定する。
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