原子核のベータ崩壊の崩壊生成物の内、ベータ線と反跳イオンを検出する事でベータ・ニュートリノ間の相対放出角度分布を決定する実験装置の開発を進めている。2003年度はベータ線飛跡検出器としての平面型ドリフトチェンバーの設計、シミュレーション、そしてチェンバー本体の製作を行った。ビームライン飛跡検出器と違い、大入射角度でのベータ線飛跡決定を行う必要がある為、軸対称ドリフト速度分布を持つ、通常の平面型ワイヤーチェンバーよりも厚みの大きいものを製作した。製作は林栄精器において行い、2003年度末の段階で、高電圧試験及び生信号の確認を終了した。本チェンバーは使用用途が低レートの実験用の為、読み出しチャネル数を大幅に減じる為にディレイライン読み出しを行う予定である。ディレイライン基板の試作、前置増幅器の選定、データ収集系の構築が2004年度の研究目標である。 一方で、反跳イオン検出器の開発も平行して進めている。2003年度はマルチチャネルプレートの2次元位置読み出しアノードの開発を行った。100ミクロン銅線を400ミクロンピッチでフレームに縦横に巻き付けた、Helical Cross Wire Delay Anodeの試作機を製作し、アルファ線源を用いたテストで2次元位置分解能200ミクロンを達成した。2004年度は反跳イオン検出に必要な、前置加速静電場を組み合わせ、イオン源を用いた低エネルギーイオンの位置検出を実現する。以上のドリフトチェンバー、イオン検出器を組み合わせたベータ崩壊の観測実験のテスト実験を理化学研究所に於いて2004年度に行う予定である。
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