原子核のベータ崩壊の崩壊生成物の内、ベータ線と反跳イオンを検出する事でベータ・ニュートリノ問の相対放出角度分布を決定する実験装置の開発を進めている。2004年度は2003年度に建設したベータ線飛跡検出器としての平面型ドリフトチェンバーの読み出し系の開発を行った。読み出しチャネル数を大幅に減じる為に、感光基板を用いたディレイライン読み出し装置を開発した。6面あるセンスワイヤー面にはそれぞれ約20本のアノードワイヤーがあり、これらを一層毎に一枚のディレイライン基板へ接続し、その両端から伝播してきた信号を読み出した。アノードワイヤーの位置は両端の信号の到達時間差から求めることが出来る。全12チャネルの信号を、一旦ASDチップを用いた前置増幅回路を通してECL論理信号へ変換し、TDCへ入力するデータ収集系の構築を行った。 得られたTDC情報から直線飛跡を求めるための飛跡再構成プログラムの開発を行った。ソフトウエアによる分解能低下量を定量的に見積もる為、まずはモンテカルロシミュレーションで、実際のTDCデータと対比すべきデータを生成し、再構成プログラムの最適化を行った。 一方で、反跳イオン検出器の開発も平行して行った。本年度はマルチチャネルプレートを10枚装着した崩壊観測用の真空槽を建設し、線源を用いたテストを行う準備を進めている。また、同装置にドリフトチェンバーを取り付け、真空遮断用の薄膜の最適化、及び分解能の評価などを今後進めていく予定である。
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