原子核のベータ崩壊の崩壊生成物の内、ベータ線と反跳イオンを検出する事でベータ・ニュートリノ間の相対放出角度分布を決定する実験装置の開発を進めた。2005年度は2003年度に建設したベータ線飛跡検出器としての平面型ドリフトチェンバーの読み出し用データ収集系の開発を行った。2004年度は試験的に読み出しチャネル数を大幅に減じる為に、感光基板を用いたディレイライン読み出し装置を開発した。2005年度はベータ・ニュートリノ相関観測実験の他に、ベータ線の偏極度測定による時間反転対称性の破れ実験を見据えた、多重飛跡検出を行うシステムに読み出し系を全面的に改造し、全チャネル読み出しを行うデータ収集系を構築した。 ディレイライン読み出しの際には6面あるセンス面の情報を12チャネルのTDC情報を読むことで単一粒子飛跡の再構築を行っていた。2005年度に構築したシステムは全センスワイヤーを読むため104チャネル読み出し可能なシステムを構築した。具体的にはASDチップを用いた64chプリアンプボードを2枚使用し、VMEの64chマルチヒットTDCを用いたVMEベースのデータ収集システムを新たに構築した。今後は2003年度に開発した反跳イオン検出器と合わせて、真空遮断用の薄膜の最適化、及び分解能の評価などと同時に本実験の準備を進めていく予定である。また、偏極8Li核のベータ崩壊を用いた、時間反転対称性の破れ探索実験を、完成したドリフトチェンバーを電子線偏極度計として動作させる事で、2006年度中にもテスト実験として開始すべく、準備を進めている。
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