一次元量子系に対する精密な計算法として知られている密度行列繰り込み群の方法をスピン自由度のある磁場中二次元電子系に適用し、その基底状態を調べるための計算機環境の整備と計算方法の改善、及び、予備的計算による計算性能向上の確認を行った。スピン自由度を含めることで生じる自由度の増加と、それに伴う計算量の増加に対処するための計算機環境の整備については、新規の計算機の導入に加え、これまで導入してきた計算機のCPU及びマザーボードの再構成により計算性能をほぼ2倍に向上させた。また、計算精度と安定性の向上を図るために、繰り込み変換時の最適経路を探索することで計算方法を改善した。 スピン自由度導入後に必要となる計算性能と精度の向上を確認しでさらに、スピン自由度導入に伴う基底状態の変化をみるために、改善された計算方法を用いてスピンが完全偏極している場合での量子ホール系の基底状態と磁場及び二次元電子面の厚みを変化させたときに生じる基底状態でのストライプ-液体転移に関する計算を行った。ストライプ-液体転移の存在については密度行列繰り込み群による研究で初めて明らかになったものであるが、特に、二次元電子面の厚みを変化させることで生じる実空間における有効相互作用の形の変化とストライプ・液体転移との関係を調べた結果として、ストライプ-液体転移を引き起こす原因が磁気長の3倍程度の短距離相互作用の減少によるものであることが分かり、二次元電子面の厚みの変化に伴うストライプ-液体転移の存在が理論的に確認された。
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