本研究では、固体表面の線形及び非線形光学応答観測を行い、実験結果と第一原理的方法に基づいた理論との厳密な対比により、表面電子状態を反映した線形及び非線形光学応答の起源を明らかにし、表面電子状態の分析(解析)手法を確立することを目的とする。本年度は以下の研究を行った。 1.表面の反射率を精密に測定する線形光学応答測定システムの構築を行った。試料からの反射光を検出する光学系とは別に参照検出系を導入した結果、キセノンランプ光源の強度の揺らぎを完全に補正することが可能となり、微小な反射率変化を測定できることが確認できた。現在、その性能評価を進めている。これまで予備的な実験としてNaCl(110)基板上に作成したPtナノワイヤの線形反射率測定を行い、特異な異方的光学応答を示すことを見出した。 2.光触媒として注目されている酸化チタン(TiO_2)の表面電子状態を解析するために、TiO_2(110)表面のSHG測定が当研究室進められている。SH光子エネルギー2hω=4eVにおいて大きな表面SH応答を示すことが実験より分かった。このSHGの起源を探るため、表面上の特定なTi-O原子対からのSH応答を計算し実験と比較した。その結果、ブリッジング酸素と6配位のチタンからなるTi-O-Ti-Oジグザグ鎖がこの表面のSH応答に大きく寄与していることが明らかになった。 3.磁性体金属表面の光学応答を調べるために、Ni(110)の清浄表面及び酸素吸着表面の計算を試みた。最初のステップとして、スピンを考慮せず、また構造最適化を行わない原子配置を用いた線形光学応答計算を行った。計算結果はNiのバルクの測定データとほぼ良く一致した。今後は、表面原子からの光学応答の抽出を行い吸着酸素原子の影響を評価する予定である。また、スピンを考慮した計算も試みる予定である。
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