メロシアニン色素には単独でJ会合体を形成するものとしないものがある。このような2種類のメロシアニン色素を混合した場合に形成されるJ会合体の構造を光吸収スペクトルと光学顕微鏡を用いた形状観察により調べた。6メチルメロシアニン(6Me-DS、J会合体形成)とカルコゲン原子を酸素に置換した色素(DO、J会合体形成せず)を用いた。これらの色素を混合し、ラングミュア・ブロジェット法により単分子膜を作製した。6Me-DSとDOの混合比の異なる色素膜[DO]x[6Me-DS]1-xにおいてXを0〜1の範囲で変化させた。 色素薄膜の光吸収スペクトルを測定した。6Me-DSのJ会合体、6Me-DSモノマー、DOモノマーの3つのスペクトル成分が重畳していると考え、スペクトルの形状解析を行った。スペクトルをこれら3つの成分に分解し、それぞれの割合と混合比Xの関係を求めて以下の結果を得た。 1)DOはどの混合比でもモノマーであり、6Me-DSと混合したJ会合体にはならない。 2)6Me-DSはJ会合体を形成するが一部はモノマーである。 3)J会合体はXの増加と共に減少し、X=0.8を越えると急激に消滅する。即ち混合比にJ会合体形成の閾値が存在することがわかった。 レーザー顕微鏡により同じ色素膜の発光像を測定した。J会合体とモノマーの発光波長は異なるため、波長分解像を測定しJ会合体とモノマーの空間分布を調べた。X=0〜0.6では10μm程度のドメインが形成される。ドメイン内部には6Me-DSのJ会合体、6Me-DSとDOのモノマーが混在している。各成分は0.5μm以下のスケールの構造体である。X=0.8ではモノマーとJ会合体が分離し別々のドメイン(数μm)を形成する。この結果はスペクトル解析からわかった様にX=0.8でJ会合体が形成され難くなり、そのために余剰なモノマーがドメインを形成することを示している。
|