本研究の目的は、サイズの揃った半導体量子ドットが規則的に配列した"量子ドット結晶"を構築し、量子ドットが「分散」した状態とは異なる「組織体」としての新しい光物性を明らかにすることである。本年度の研究成果について報告する。 正負に帯電したCdS量子ドット間の静電相互作用を利用したCdS量子ドット結晶の作製に取り組んだ。まず〜7%という狭い粒径分布幅をもつ正及び負に帯電した量子ドットを作製することができた。正及び負に帯電した量子ドットの混合溶液における吸収エネルギーが個々の量子ドットの吸収エネルギーよりも〜60meV低エネルギー側にシフトし、量子ドット間の静電相互作用が量子ドット結晶を作製する駆動力になり得ることを明らかにした。さらに試料溶液中に析出した量子ドット結晶のX線構造解析において2θ角が〜4°付近に回折ピークを明確に観測し、量子ドットが数nmの間隔で周期的に配列し手いることを確認した。すなわち、正負に帯電した量子ドット間の静電相互作用により、量子ドットが周期的に配列した量子ドット結晶を作製することに成功したことを示している。さらに、量子ドット結晶の構造を制御するため、光エッチングを利用し量子ドットサイズを制御することに取り組んだ。窒素レーザー励起色素レーザーを用いて、〜4%まで粒径分布幅を狭めることに成功し、さらにその後有機分子を用いた表面修飾により、帯電状態を制御したCdS量子ドットの作製に成功した。
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