研究課題
GaN/AlN量子井戸は伝導帯のバンドオフセットが約2eVと大きく、光通信に使われている近赤外領域でのサブバンド遷移を実現できる。また、LOフォノンとの強い結合の為、非輻射緩和が100fs程度と高速であることが予想され、高速非線形材料として非常に有望である。これまでは十分なサブバンドエネルギー間隔がある薄い井戸層を作製する際にGaN-AlN間の格子不整合などが問題になっていたが、過去1〜2年の間に日米のいくつかのグループで波長1μm台前半にサブバンド遷移を持つ量子井戸が実現されるようになっている。しかしながら現在のところGaN/AlN量子井戸のサブバンド間遷移に対する光スイッチング特性(非線形光学定数及び緩和時間)を評価した例はほとんど無い。本年度の研究では本学電子工学科の岸野研究室から提供されたGaN/AlN量子井戸で波長1.55μmにピークを持つサブバンド間遷移を観測し、さらにその非線形光学応答の評価を行った。具体的にはフェムト秒光パラメトリック増幅器からの波長1.55μmの出力光を使い、ドープされたGaN/AlN多重量子井戸に対してブリュースター角入射での縮退ポンプ・プローブ分光を行った。得られた信号には明らかな偏光依存性が見られ、さらにその緩和には高速な成分(140fs)と遅い成分(1.3ps)があることが分かった。また、プローブ光透過率変化のポンプ光強度依存性から、この遷移における飽和強度及び三次の非線形光学定数を見積もることができた。
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