研究概要 |
本研究は,ゼオライト中のアルカリ金属クラスターの電子構造を,明らかにするすることを目的としている.昨年度準備した試料作成のための真空ラインを更に拡充し,真空に引きながら,ゼオライト骨格中に多数分布する水分を加熱除去出来るようにした.今年度はさらに,クラスターを作成する前の,ゼオライトそのものの状態に着目し,遠赤外領域のスペクトルにより,陽イオンの挙動を調べた.また,昨年度測定を行った軟x線発光分光及び光電子分光の結果を更に詳細に検討した. アルミノ珪酸塩であるゼオライトは,Si,Al,Oから骨格構造ができており,電荷補償のための陽イオンが骨格の隙間に分布している.骨格構造と陽イオンとは結合状態が異なるため,赤外活性モードの波数領域が異なっている.100^-200cm-1の遠赤外領域には,骨格構造の振動モードはあまり観測されず,陽イオンのモードが多く観測される.今回は,100μm程度の大きな単結晶が得られるゼオライトMORに着目し,遠赤外顕微分光を行った.測定はSPring-8,BL431Rの顕微分光ステーションで行った.MORは,結晶のc軸方向に一次元チャンネルを持っており,構造が異方的である.チャンネルに平行な偏光と垂直な偏光を指定した顕微分光を行った結果,偏光方向により波数の異なる陽イオンの振動モードを観測した.今後,アルカリを吸蔵させた試料における遠赤外測定も行い,電子状態と振動モードとの関係を調べる予定である. 昨年度測定した軟X線発光分光ではKを吸蔵させたゼオライトSODにおいて,吸蔵Kに由来すると思われる構造を観測した.この構造は,細孔中に形成されたKクラスターの状態を反映している可能性があるため,今後,Kを吸蔵させた試料と未吸蔵の試料との比較,Kの吸蔵量を変えた試料との比較などを行い,クラスター準位によるバンドである確証を得たいと考えている.
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