平成15年度はパルス磁場中でのマイクロ計測を可能にするために必要な技術開発を中心に行い、以下に述べるような成果を挙げることができた。 1.マイクロコイルを用いた表面インピーダンス計の開発 トンネルダイオードを用いた自己共振回路を製作し、その共振周波数の変化から表面インピーダンスを測定する方法を採用した。パルス磁場中での周波数読み出しには通常用いられる周波数カウンタが使えないので、それに変わる方法としてFMラジオ用ICを用いた高感度復調器を製作した。この方法により、安価で簡便に測定を行うことが可能になった。実際に有機導体、酸化物導体などに対して適用し実際にその有用性を確かめた。また、微小試料にも対応できるようにコイル形状等の最適化を行い、その結果約200μ角程度の試料でもパルス強磁場中で測定が可能になった。 2.マイクロキャパシタンスを用いたファラデー法の開発 微小試料の高感度磁化測定を可能にするためマイクロキャパシタンスを用いたファラデー法の開発を行った。マイクロキャパシタンスとしては市販の血圧計に用いられているシリコン製ダイヤフラムを用いた。まずは定常磁場中でその性能の評価を行うためにさまざまな試料について測定を行った結果、約10μg程度の試料でも十分な感度が得られることが確認できた。続いて、パルス強磁場下でのテスト行った結果、同様に約50μgの試料でも測定に成功した。現在、磁化の絶対値を求めるための較正方法を確立すべく開発を進めている。 以上が装置開発に関する成果であるが、実際にこれらの装置を用いてすでに金属間化合物超伝導体MgB_2の超伝導相図に関する測定を始めている。BをCで置換することで従来よりも高い上部臨界磁場を示すことを見出した。このことはMgB_2の実用を考える上で重要な知見である。
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