研究課題
ドハース・ファンアルフェン効果の測定に必要なパルス磁場中での高速(デジタル)位相検波技術を確立した。具体的にはレコーダ(デジタルオシロスコープ)のサンプリング(2MS/sec)のタイミングをPLL-VCO法を用いて変調波(デジタルファンクションジェネレータ;100kHz)と同期させ信号と参照波および磁場の全波形をとり込む。得られた信号はPC上で(参照波と同位相の)正弦・余弦関数と掛け合わされ振動周期のちょうど整数倍の幅の区間で数値積分する。この積分区間を移動させることにより全時間域での位相検波ができる。この方法の長所はたとえ積分区間が振動1周期分でも原理的に高調波がすべて自動的に落ちることである。このようなフィルタの通過特性はアナログ法(電気回路)で作成するのはきわめて難しく、また測定パラメータが変わるたびに回路を作り替えなければならないが、デジタル法の場合は処理プログラムの修正だけで済むため性能および開発コスト・時間の面で有利である。更に数値処理部分はリアルタイム処理ではないので乗算処理の正弦・余弦関数に逓倍振動を用いれば1回の測定で複数の高調波成分も検波できる。これにより基準振動に対し複数の高調波成分を重ねた変調を加えて成分ごとに分離検波したり、あるいは非線形応答を任意の次数まで一括して検波することも可能になる。現状では最高磁場50T、パルス幅21msecの非破壊型パルス磁石と^4Heおよび^3He冷凍機の組み合わせで通常の磁化測定が可能な状況である。当初の目的であるドハース・ファンアルフェン効果の測定は達成出来なかったが、これらの磁場発生設備と前述の位相検波技術を用いてキャパシタンス法によるスピネル型スピン-フラストレーション系物質CdCr_2O_4の単結晶の磁歪の測定を行ない、磁化プラトーの発現に伴う体積収縮を明らかにした。
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