研究概要 |
核スピン1/2を持つ^3Heは、原子自身の交換に由来する数mK程度の交換相互作用を示す。^3Heをグラファイト上に吸着させた単原子層の固体ヘリウム3は非常にきれいな2次元核磁性体で、特定の面密度では、「三角格子構造に起因する幾何学的なフラストレーション」と「反強磁性と強磁性の多体交換相互作用の競合によるフラストレーション」との2つが深く関与していると考えられ、その基底状態に興味が持たれている。これまでの実験から、スピン液体状態が基底状態として指摘されていると同時に、強磁場中での中間的な量子状態に対応して磁化プラトーが出現する可能性が、理論的に予想されている。これらのことを明らかにするべく、磁場中で磁化測定するためのファラデー型磁化測定セルの設計、製作を行った。基盤となるグラファイトシート(グラフォイル100枚、表面積12m^2)を、熱処理後、銀製熱リンクとの拡散溶接を行い、測定セルの心臓部を作成した。研究室現有の核断熱消磁冷凍機(最低温70μK,15Tesla超伝導磁石付)にセルをセット出来るよう銀製の熱リンクなども作成した。テスト実験を行い、感度は十分であるが、振動対策が必要なことを明らかにした。また、それと並行した実験で、グラフォイルをバルク液体中に浸した場合、圧力誘起の新しい2次元強磁性層が成長することを見出し、国際会議"Quantum fluid and Solid 2003"(米、ニューメキシコ州)、及び国内学会にて発表した。
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