研究概要 |
核スピン1/2を持つ^3Heは、原子自身の交換に由来する数mK程度の交換相互作用を示す。^3Heをグラファイト上に吸着させた単原子層の固体ヘリウム3は非常にきれいな2次元核磁性体で、特定の面密度では、「三角格子構造に起因する幾何学的なフラストレーション」と「反強磁性と強磁性の多体交換相互作用の競合によるフラストレーション」との2つが深く関与していると考えられ、その基底状態に興味が持たれている。これまでの実験から、スピン液体状態が基底状態として指摘されていると同時に、強磁場中での中間的な量子状態に対応して磁化プラトーが出現する可能性が、理論的に予想されている。これらのことを明らかにするべく、磁場中で磁化測定するためのファラデー型磁化測定セルの開発を行っている。昨年度までに作成したセルの改良(振動によるノイズの除去など)を行い、グラファイト上^3He第一層の測定を試みた。この面密度では、^3He単原子層は常磁性的な挙動を示すが、約1mKにおいて,6teslaの磁場まで、磁化曲線を測定できていることが明らかとなった。この結果は、国際会議"Quantum fluid and Solid2004"(イタリア、トレント)、及び国内学会にて発表した。今後目的としている、フラストレーションの関与している領域での測定を行う予定である。また、それと並行した実験で、グラフォイルをバルク液体中に浸した場合、圧力誘起の新しい2次元強磁性層が成長することを見出したが、その結果を上記国際会議およびPhysical Review Letters誌に発表した。
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