研究概要 |
核スピン1/2を持つ^3Heをグラファイト上に吸着させた単原子層の固体ヘリウム3は非常にきれいな2次元核磁性体で、特定の面密度(4/7整合相)では、「三角格子構造に起因する幾何学的なフラストレーション」と「反強磁性と強磁性の多体交換相互作用の競合によるフラストレーション」との2つが深く関与しており、その基底状態に興味が持たれる。これまでの実験から、スピン液体状態が基底状態として指摘されていると同時に、強磁場中で磁化プラトーが出現する可能性が、理論的に予想されている。磁場中挙動を解明すべく、磁場中で磁化測定するためのファラデー型磁化測定セルの開発を行い、1mK,10Teslaまでの測定を行った。結果として、4/7整合相では、磁化が非常に抑制されており、10Tesla中でも飽和磁化の半分しかでておらず、また飽和磁化の1/2〜1/3付近にプラトー状の構造の存在が強く示唆された。この結果は、国際会議"LT24"(アメリカ、フロリダ)、及び国内学会にて発表した。 以上のように、3年間の期間で、当初目的とした2次元^3He磁場中挙動を低温強磁場という特殊な環境下の測定を完了することができ、本研究課題は大成功のうちに終了した。 また、それと並行した実験で、2次元^3Heに関連深い1次元^3Heの比熱測定を行い、その結果を上記国際会議およびPhysical Review Letters誌に発表した。
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