研究概要 |
CsFeCl_3のS=2の電子状態の磁場依存性の測定 現有のパルス強磁場ESR測定装置に,現有の遠赤外分子レーザーからの出力を導入する伝送系の製作を行った.レーザーからの遠赤外光を,円錐形のホーンで受け,内径10mmの円形導波管により,パルス強磁場発生装置と組み合わされたESR測定装置に導入した.一方,遠赤外分子レーザーについては,光励起の遠赤外レーザー側は,不足していた真空排気系を整備した.以前,ガス交換にかなりの時間が必要であった経験から,油拡散ポンプを新設し,高真空排気を可能とし,ガス交換時に以前に用いていたガスの残留を速やかに取り除けるようにした.このレーザーの励起用のCO_2レーザー系に関して発振テストを行った.最も発振強度が大きい9P(22)を中心に15本のラインについて発振を確認した.しかしながら,当初のスペックでは9P(22)で200Wの出力が期待されているが,現状では最大30Wであった.ミラー系の経年劣化を考慮してもいささか低すぎる値であり,遠赤外レーザー発振を行うためにも最低50Wの出力を確保する必要がある.また,出力の上がらない原因として,ZnSeミラーをコントロールするピエゾコントローラーがまったく動作していないことがわかった.そこで,他機関で廃棄した同型のCO_2レーザーのピエゾコントロール部の移植を試みている. CsFeCl_3の7.5T付近のESR吸収の微細な構造の起源 7.5T付近のESR吸収の微細な構造については現行のパルス磁場を用いたESR装置では,断熱的な磁化過程のため,再現性や,温度の不確定さがのこり,決め手に欠ける.そこで,現有の12T超電導マグネットと1THzまでのベクトルネットワークアナライザー(現有)を用いて,定常磁場によるW-band ESR測定用のインサートを製作した.空洞共振器として円筒空洞を作成して測定を行ったが,試料挿入に伴いQ値が著しく低下し,十分なS/Nの信号は得られなかった.円筒空洞共振器に変えてファブリペロータイプのものを製作しテストを行っている.
|