研究概要 |
本研究の目的は、試料の圧力が広い温度範囲で温度に依存しない定荷重方式の加圧装置を新たに開発し、CeRhAs単結晶試料の圧力下における電気抵抗、熱膨張、熱電能の温度変化の測定から、エネルギーギャップ形成機構と構造相転移との関連性を明らかにすることである。 定荷重方式の加圧装置としては、室温部分にある油圧ラムの発生した荷重を長さ約140cmのステンレス棒でクライオスタット内のピストン・シリンダー型圧力セルに伝える方式を採用した。目標とした実験条件は圧力:0〜3GPa、温度:1.5〜300K、磁場:0〜10Tである。オックスフォード社製の温度可変インサート(内径約50mm)に入れるため、装置の外形は42mmとした。また、加圧棒やガイドチューブの材料として、SUS304より引っ張り強度が60%以上高いステンレス鋼SUS304N2を使用した。これにより設計上の耐荷重は13トンとなった。実際、内径5mmのシリンダーを用いて室温で圧力発生実験を行ったところ、荷重8トンでほぼ3GPaの圧力が発生することがわかった。また、低温での圧力をSnの超伝導転移の圧力変化から評価し、1GPa以上では室温と低温での圧力が良く一致することを確かめた。 この装置を用いて、T_1=360K、T_2=235K, T_3=165Kで逐次構造相転移を示すCeRhAs単結晶試料の圧力下における電気抵抗、熱膨張を測定した。その結果、加圧とともにT_1は急増し、T_2とT_3は低下した。1.5GPa以上でT_2とT_3は消失し、それ以上の圧力ではT_4=100K付近に新たな1次転移が出現した。エネルギーギャップはT_4での転移の出現に伴い、急激に抑制された。このことはセリウムの4f電子と伝導バンドの混成によってギャップが形成される機構では説明できず、CeRhAsのギャップが構造相転移と密接に関連することを示唆する。これらの成果をPhysical Review Bに発表した。
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