SPring-8ビームラインBL19LXUにて、反強磁性体FeCl_2・2H_2Oの磁場中X線磁気散乱実験を行って、基底状態の反強磁性磁気構造に対応するX線磁気ブラッグ反射を観測した。さらに、磁場依存性の測定により、メタ磁性転移磁場において反強磁性反射が消失し、それと入れ替わって磁場誘起相(フェリ相)に対応する新たなブラック反射が出現することを明らかにした。これら2種類の反射は、1次相転移であることを反映して磁場減少時においてはある特定の磁場領域で共存することを明らかにした。この結果に関して、論文誌J.Phys.Cond.Matter 16(2004)L57.、および国際会議7^<th> International Symposium on Research in High Magnetic Fields RHMF2003(プロシーディングスとしてPhysicaBに掲載予定)にて研究発表を行った。 同ビームラインにて、スピンパイエルス物質CuGeO_3の磁場誘起相における不整合格子変調に関する精密な磁場-温度依存性の測定を、X線を用いた回折実験としては世界最高である15テスラまでの磁場中にて行った。以上の実験結果に関しても、国際会議RHMF2003(プロシーディングスとしてPhysicaBに掲載予定)にて研究発表を行った。 大阪大学極限科学研究センターにて、カゴメ格子反強磁性体の低温-強磁場下での磁化測定を、希釈冷凍機とパルスマグネットを用いて行い、飽和磁化の1/3に対応する磁化プラトーを観測した。さらにパルス磁場のスイープ速度依存性から、このプラトーはある特定の磁場スイープ速度領域以外では観測されないことを明らかにした。この結果は、カゴメ格子の磁気的フラストレーションに起因する、多重の近接したエネルギーレベルが存在することを反映した、過渡的な現象であると結論することが出来る。この結果については、論文誌Europhys.Lett.65(2004)705.、及び国際会議International Conference on Magnetism ICM2003(プロシーディングスとしてJ.Mag.Mag.Mat.に掲載予定)にて研究発表を行った。 有限要素法を用いたシミュレーションにより、パルスマグネットを用いた強磁場発生法に関する三次元数値解析を行った。今後、連成解析を行うことによって、磁場・応力・温度の各パラメータを相互にフィードバックさせた形のシミュレーションを行い、実際の磁場発生試験との比較を行う予定である。
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