研究概要 |
光の非線形伝播解析法として、石英のセルマイヤの式における3つの共鳴周波数を考慮し、かつラマン応答も考慮した時間領域差分法(拡張FDTD法)を考案し、石英ファイバにパルス幅12fsの光パルスを通した実験結果と計算結果を比較した。その結果、従来法のビーム伝搬法(BPM)によるものより、拡張FDTD法による計算結果の方が実験結果に近い結果が得られた。次にチャープがかかった12fsの光パルスファイバ伝搬解析を行い、実験と比較した結果、従来のFDTD法に比べて拡張FDTD法を用いた方が、時間波形について良く一致した。 さらに、拡張FDTD法を用いて、緩包絡波近似(SVEA)が破綻しない程度のピーク強度が低いレーザーパルス(ソリトン数N=1)について、正常分散領域と異常分散領域において、非線形伝播計算を行い、異常分散領域においてはFDTD法で直接表現していない自己急峻化の効果も計算結果に現れることを確認した。また、パルス幅を12fs,7fs,4fsと変化させ、SVEAの破綻がどこで起こるかを調べたところ、N=1では、正常分散領域では4fsまでSVEAが破綻せず、異常分散領域は7fsで破綻することが分った。そしてN=2の場合についても同様の計算を行い、N=2では全ての場合についてSVEAの破綻が確認された。 最後に、拡張FDTD法を用い、792nm、1072nmの2つの波長の光パルス(パルス幅74fs)の石英ファイバ中での同時伝搬解析を行った。この解析により、FDTD法において誘起位相変調効果が計算結果に現れることが確認された。また従来法では明示されなかった時間領域におけるビート波形や、スペクトル領域における位相が連続的に求められるなどの利点が確認された。
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