量子格子模型の大規模シミュレーションのための新たなフレームワーク構築を目指し、平成15年度に引き続き平成16年度は以下の研究を行なった。1)XMLフォーマット形式で定義されれた量子格子模型を読み込み、そのハミルトニアンを行列の形で生成するC++ライブラリ(Model Library)を開発した。また格子構造を扱うライブラリ(Lattice Library)についても改良を行なった。2)これまで開発されたライブラリをALPSライブラリとしてまとめ、平成16年3月末にバージョン1.0を公開した。その後もバージョンアップを重ね、平成17年3月末時点ではバージョン1.2.1を公開中である。3)ALPSライブラリを利用するアプリケーションプログラムとして、量子モンテカルロライブラリALPS/looperを開発し、平成16年6月にバージョン3を公開した。4)ALPSライブラリ、ALPS/looperライブラリにもとづく、量子モンテカルロ法を用いた大規模シミュレーションにより、スピンギャップをもつ一次元スピン1量子スピン系に対するボンドランダムネスの効果を調べた。特に「ひねり秩序演算子」の方法をランダムスピン系にはじめて適用することにより、従来よりも格段に詳細な基底状態相図を得ることに成功した。ランダムネスの分布関数による相図の概形の質的な違いなど、今まで他の方法で得られていたものとは本質的に異なる結果により、スピンギャップ系に対するランダムネス効果の統一的な観点からの理解にむけた様々な新しい知見が得られた。
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