研究概要 |
Lax対とは多くの可積分方程式に付随している線形の微分演算子の対である。スカラー型と行列型とが存在しており,私が提唱しているスカラー型ラックス対の可積分高次元化法(Lax-pair Generating Technique)の有効性を検証することが本研究の主目的の一つである。 Lax-pair Generating Techniqueを用いて,Burgers,KdV,KP方程式などのスカラー場の可積分方程式を非可換空間へ拡張する研究を行い,さまざまなソリトン方程式の非可換空間上への拡張や非可換空間でのWard予想を提唱した.つまり非可換空間上の可積分方程式の構成にLax-pair Generating Techniqueは非常に有効であることが検証された。ところで,可換空間において擬微分作用素を用いて,ソリトン方程式を体系的に研究することができることが広く知られている(佐藤理論).同様に,非可換空間上においても擬微分作用素を用いた議論が可能であることが予想される.実際,非可換Burgers階層の導出過程で,特別な場合の非可換佐藤理論の可能性を指摘し,更に一般的な定式化に成功した。次年度はこれらの非可換佐藤理論の代数構造を解明したい。 円筒KdV方程式やErnst方程式などは非圧縮・粘性流体,弾性体の力学,プラズマ現象や場の理論の数学モデルである.これらは係数が独立変数に依存する非線形偏微分方程式(非自励な非線形偏微分方程式)である.現在知られている非自励な非線形偏微分方程式は,その多くは可積分性などは期待できなかった.(高次元の場合の研究を見うけることは出来ない.)Lax-pair Generating Techniqueを用いて,理工学の様々な分野に応用できる可能性のある非自励な非線形偏微分方程式を構成に成功した.現在,それの厳密解の詳細な性質を調べることで背後にある数理構造の解明を進め,一般的な数理構造を明らかすることを試みている。本研究は新しい方程式の導出や未知の現象の予言を目標としているが,これは次年度に行うことを企図している。
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