通常の周期格子を含むランダム格子上に定義された、多重起動の相互作用する電子模型群の基底状態を解析的に研究した。この基底状態は、電子の軌道を「色」に、格子の双対グラフを「国」に対応させた場合、グラフ理論における染色問題に帰着される。染色問題はグラフ理論において四色定理として知られる離散数学の1つの分野である。前年度までは電子模型群の一般論に関する研究を主として行ってきた。今年度は具体的に現実に対応する模型に関して研究を行った。 (1)具体的には、多重電子軌道において運動積分のネットワークがダイナミカルに変化するような模型の性質を調べた。このネットワークを多様体へ埋め込み、多様体の種数が変化するようなネットワークの再構成が起こる場合に、軌道秩序状態と基底状態の縮退度が指数定理によってどのように支配されているか、そのメカニズムを解明した。 (2)模型群の中でも、Mielke-Tasaki強磁性のメカニズムに近い機構で特殊な軌道秩序状態を呈する模型について、具体的に厳密解を構成し、基底状態の性質を調べた。 (3)さらに、模型の変形により、異方的超伝導ペアリング状態を呈する模型を構成し、その基底状態の性質を調べた。 (4)厳密解の構成のためには、模型に出てくるいくつかのパラメータ間に、一定の条件が成り立たなくてはならない。その条件を外した場合に厳密解により代表される性質をもつ状態が安定かどうかを数値的手法により調べた。具体的にはパワーメソッドを用いたハミルトニアンの対角化を行い、数値的に基底状態を求めることで、種々の物理量を計算した。 (5)結晶の位相幾何学的分類を行った。この分類に実際に対応する物質群として、いわゆるトポロジー的結晶をあげることができる。このトポロジー的結晶の分類を提案し、現存するトポロジー的結晶の分類を行った。
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