物理や数学にあらわれるほとんどの方程式は、グローバルな性質を保ったまま差分かする事ができない。それに対して、多くの可積分方程式は従属変数まで含めて差分化する事が可能であり、これはソリトンセルオートマトンモデルと呼ばれている。この研究の目的はこのソリトンセルオートマトンモデルの数理構造を、最近発見されたソリトンセルオートマトンモデルのBacklund変換方程式を使って解明する事である。 当初の予定では、このBacklund変換方程式を使って、N Soliton解や初期値問題の解法を求める予定であったが、それに先立ってセルオートマトン自体の方程式の構造や、差分方程式のBacklund変換について詳しく調べ、有意義な成果をあげる事が出来た。 1.超離散KP方程式のR-matrix 超離散KP方程式は、多くのソリトンセルオートマトンモデルを特別な場合として含む、重要な方程式である。しかしながらこの方程式は他の多くのソリトンセルオートマトンと異なり、3次元の方程式であるため、自然にセルオートマトンモデルとして解釈する事が出来なかった。そこでこの方程式で、R-matrixに相当する概念があるかを調べ、これを構成する事に成功した。まだ自然な解釈を得る事は出来ていないが、他の研究との関連を考えると、大きな前進である。 2.Backlund変換方程式を使った、保存量の導出。 具体的な解を構成しようとする際に、保存量が重要な役割を果たす事がしばしばある。そこで、特にセルオートマトンモデルでの対応物が見つかっていない離散BKP方程式の場合に、Backlund変換方程式から保存量を求める問題に挑戦し、・Backlund変換方程式の可換条件をどのように選べばよいか、・BKP方程式のいくつかのレダクションにたいする保存量、を明らかにした。
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